「育休明けに給与が下がった」「時短勤務にした場合のマイナス分が大きい気がする」など、育休明けの待遇トラブルは意外と多いものです。
育休取得を理由とした給与の減額や等級の引き下げは禁止されているものの、「時短勤務だから仕方ない」「今までと 仕事内容が変わるのだから、給与も見直しされるのが当たり前」と言われると、どこからが違法なのか判断できないこともあります。
本記事では、職場復帰の際に降格や減給を言い渡された場合、どこまでが正当な対応で、どこからが違法になるか解説します。
育児・介護休業法第10条では、「事業主は、労働者が育児休業をしたことを理由として、その労働者に対して不利益な取扱いをしてはならない。」と定められています。
つまり、育休を取得したことを理由に昇給を取りやめたり、役職や等級を下げたりすることは法律で禁止されています。
あわせて、労働基準法第91条で定められている「減給の制限」についても知っておきましょう。
「減給する場合であっても、減給の額には制限がある」という法律であり、「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と規定されています。
つまり、「1回の減給額は、その人の1日分の平均給料の半分まで」「1回だけじゃなくても、1回の給料日で減らせる合計額は給料全体の10分の1まで」ということです。
会社が自由に減給できるようにすると、労働者の生活が成り立ちません。
そのため、減給をする場合には正当な理由が必要であり、金額にも上限を設けること、と定めているのです。
育児休業は法律で認められた労働者の正当な権利です。
育休を取ることでキャリアが不利になったり、差別されたりすることがないよう、法律でルールを明確にしているので、基本的に育休明けの給与に関する心配はしなくてよいでしょう。
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育休を取得したことを理由に減給することは違法ですが、「育休明けからはフルタイムではなく時短勤務にする」など働き方が変わった場合、それに合わせて給与も見直されます。
「働く時間が短くなった分だけ給与が減る」のは違法ではありません。
育休明けに時短勤務を予定している方は、以下についてチェックしておきましょう。
時短勤務制度とは、育児や介護など理由がある従業員が通常より短い時間で働けるようにする制度です。
主に子育て中のパパ・ママのために使われる制度で、育児介護休業法で企業に導入が義務づけられています。
対象者は「3歳未満の子どもを育てている正社員・契約社員など」であり、「1日6時間の勤務時間に短縮」できるのがポイント。
勤務時間については会社と労働者で話し合いながら決めることが多く、同じ時短勤務でも「Aさんは6時間勤務」「Bさんは7時間勤務」など、6時間以上の範囲で自由に設定できます。
また、育休明けの減給と同じく、時短勤務の取得を理由とする不利益な取り扱い(降格・減給など)も禁止されています。
「時短勤務にするなら正社員でいられなくするぞ」「時短勤務にするなら辞めてもらう」などの声かけは、いずれも法律違反です。
基本給は労働時間の比例で考えるのが原則です。時短勤務になってからも育休前と仕事内容や責任の程度が変わらなければ、時間当たりの金額は変わらず、労働時間に比例して算出します。
フルタイム勤務時に、1日の実労働時間が8時間であった人が時短勤務により実労働時間が1日6時間になった場合、基本給においては単純に25%減額となるケースが多いです。
ただしボーナスやみなし残業代、各種手当などは会社ごとのルールで支給されるため、基本給以外で減収となる場合もあります。 不安な場合は、自身の職場に確認してみましょう。
【計算式】
基本給×月の合計実労働時間÷月の合計所定労働時間
【例】月の基本給が30万円で8時間→6時間への短時間勤務に切り替えた場合
30万円×(6時間×21日)÷(8時間×21日)=22.5万円
なお、賞与(ボーナス)は勤務時間・評価などに応じて会社が独自に決定します。
フルタイムでも時短勤務でも関係なく一律を支給する会社もあれば、基本給と同じく働いた時間に応じて計算する会社もあります。
また、賞与は業績に応じて変動するケースも多く、業績が高ければ賞与も高く、業績が下がれば賞与も下がることが一般的です。
住宅手当や職務手当など、各種手当の扱いも会社ごとに異なるので事前に確認しておきましょう。
まずは冷静に、上司や人事部に相談しましょう。
「育休を取ったこと」と「給与・等級が下がったこと」の因果関係を説明してもらう目的で、感情的にならないよう相談するのがポイントです。
直属の上司に取り合ってもらえない場合や、直属の上司や労働法に詳しくない場合は、本社の人事部に相談して問題ありません。
また、ハラスメント相談室やコンプライアンス窓口に相談して、対応方法を考えてもらうのもよいでしょう。
意外にも、会社側の勘違いや給与計算のミスであることも少なくありません。
労働組合は、働く人の権利や職場環境を守るための団体です。
会社と個人では立場に差があるため、会社との相談がうまくいかないときは労働組合に相談してみましょう。
個人では難しい交渉も組合が代理で会社と話し合ってくれるので、説得力のある伝え方が可能です。
ただし、労働組合は全ての企業で導入されているものではありません。
今勤務中の会社に労働組合がない場合、外部の労働組合(ユニオン)や個人加盟できる労働組合への相談を検討してみましょう。
労働組合は「相談内容の正当性」をもとに動きます。感情論より証拠や事実を整理して伝えることが大切です。
参考:労働組合法
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)とは、育児介護休業法や男女雇用機会均等法に基づく問題について、無料・秘密厳守で相談できる場所です。
厚生労働省管轄の公的組織であり、公的・中立の立場からサポートしてくれます。
また、万が一育児介護休業法や男女雇用機会均等法に違反している場合、企業側に事情聴取・改善指導ができる機関でもあります。
不当な扱いであると確証が持てるときや、法律に則った対応を強くお願いしたいときは、とても頼もしい存在となるでしょう。
参考:雇用環境・均等室の相談窓口について|厚生労働省 福井労働局
育休明けに不当な給与減額や降格がある職場は、産休育休や時短勤務の制度が形としてあるだけで、実際には子育てとの両立に理解がないことが多いです。
職場に訴えて育休明けの待遇を改善してもらえたとしても、居心地が悪くなることもあります。
なかには「また何か言われるのでは?」と周りの目を気にしたり、「育休を取った自分が悪いのか」と自己否定感が出たりすることも問題です。
そんな環境に無理してとどまるより、制度も風土も整った企業に転職する方が、安心して長く働けるでしょう。
転職は、正当な評価・キャリアアップの機会を取り戻すための手段としても有効です。
「マミートラックに陥るのは嫌だ」「時短勤務でも十分な給与を稼ぎたい」と感じている人は、思い切って転職を検討してみてはいかがでしょうか。
マミートラックの詳しい情報はこちらの記事をご覧ください。
実際、育休明けの復職を機に給与を下げられた人は少なくありません。
リアルミーキャリアには、以下のような体験談が寄せられています。
具体的な体験談は、以下でも紹介しています。
その他、「時短勤務にしないでほしいと言われた」「フルタイムでないと復職させられないと言われ、時短勤務を取らせてもらえなかった」などのトラブルも起きています。
育休明けに不当な待遇を受けたと感じたら、専門機関への相談や転職による環境改善を検討してみましょう。
育休明けなど働き方が変わるタイミングには、待遇・給与・働き方に関する丁寧な相談が欠かせません。
しかし、会社と労働者との間で意見が折り合わなかったり、違法性が疑われる一方的な人事になったりするケースもあるので注意しましょう。
明らかに不当だと感じたときは黙って受け入れず、専門機関へ相談することが大切です。
リアルミーキャリアでは、転職して職場環境を整えたい方を最大限サポートしています。
ワーママ専門の転職エージェントなので、産休育休明けの復職や時短勤務に関する相談にも強みがあるのがポイント。
時短勤務でもしっかり稼ぎたい方や、キャリアアップを諦めたくない方を全力で支援しますので、お気軽にご相談ください。