ワーママが転職する際に特に重視する項目のひとつに、「労働時間」が挙げられます。
子どもの送迎や家庭の事情などを総合的に考えてフルタイム就労が厳しい場合、時短勤務が選択肢となるでしょう。
しかし、転職後すぐに時短勤務できるとは限らず、「最初はフルタイムが必須」という企業も多いもの。
時短勤務は法律で認められた権利なのに、なぜ?と感じることも多いのではないでしょうか。
今回は、転職後すぐに時短勤務するのが難しい理由を解説します。
まずは、時短勤務にまつわる現状を整理しながらお伝えします。自分の会社だけでなく他社の事例やビジネス業界全体のトレンドを知り、転職活動に役立てましょう。
厚生労働省の調査によると、短時間勤務制度(時短勤務制度)を設けている企業の割合は60%を超えていることがわかります。
多くの企業で時短勤務を認めている他、所定外労働の制限(残業免除)、フレックスタイム制度やリモートワークの導入なども進んでいることがわかります。
とはいえ、実際に育児中の社員をどうサポートしていくかは、企業により異なります。
フレキシブルな働き方ができて働くパパ・ママから支持されている企業もあれば、時短勤務はできてもマミートラックなど課題が多い企業もあるので注意しましょう。
マミートラックについては以下で詳しく解説しています。
時短勤務の導入率が60%を超える一方、入社直後から時短勤務できる企業はまだ少ないのが現状です。
基本的に、時短勤務は「既存の従業員向けの制度」です。
「時短勤務できるのは入社して1年経ってから」と就業規則で定められていることが多く、特に大企業など従業員数が多い職場では、この傾向が強いとされています。
はじめから時短勤務を前提とする採用は実施していない企業が多く、「新規採用であればフルタイムで」というイメージも依然として根強いままと言えるでしょう。
なお、厚生労働省が作成したモデル就業規則にも、時短勤務は入社1年を超えた従業員向けの制度だと記載されています。
入社直後からの時短勤務を制限するものではありませんが、実際に採用面接の場で「すぐに時短勤務をしたい」と伝えても難しいのが現状です。
時短勤務を認める企業が一定数ある一方で、時短勤務できる期間に制限を設けている企業が多いことも事実です。
労働基準法では「3歳未満の子を養育する労働者は時短勤務を申請できる」と規定されていますが、それ以外の時短勤務適用については企業の「努力義務」です。
実際に、時短勤務を認める子供の年齢を「3歳未満」と定めている企業は全体の44.8%で、ほぼ半数近いことがわかります。
結果、子供が4歳を迎えて以降はフルタイム勤務を求められるようになり、「まだ時短勤務のままでいたい」と考える方とのギャップが生まれています。
また、「子供は4歳になったけれどまだ熱も出やすいし、時短勤務が必要。でも会社はフルタイムに戻せと言う…」というギャップにより、転職を検討するワーママも少なくありません。
「小学校入学後の“学童+仕事+家事”が実は一番きついのに、時短勤務制度は適用外になる」という小1の壁にぶつかるワーママも、同じく働き方に困ることがあります。
(※)参考:育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省
「時短勤務の転職は難しい」と言われており、実際に「転職自体を諦める」「時短正社員以外の働き方で転職する」という人は少なくありません。
時短勤務の転職が難しい理由は、主に以下の通りです。
また、「時短勤務制度はあるけれど実際に時短勤務の人に頼める業務はない」と言われてしまうことも。
制度と実態にズレが生じているケースは珍しくなく、あくまでもフルタイムを前提としたポジションや教育形態しかない企業も多いのです。
同様に、転職希望者側も「保育園お迎えの時間を考えると会社の立地がかなり絞られる」「リモートワークOKでもフルタイム前提の求人では合わない」と感じることもあるでしょう。
一般的な転職サイトや転職エージェントでは即時短勤務できる求人が見つからず、転職に二の足を踏んでしまうワーママが多いのです。
もし転職後すぐに時短勤務できない場合、どのような弊害が起きるかシミュレーションしてみましょう。
自分の工夫でどうにかなりそうなことであれば時短勤務しない選択肢もありますが、物理的に無理な状況が続くのであれば、他の手段を考える必要がありそうです。
フルタイムで働く場合、一番のネックとなるのが保育園の送迎です。
「保育園が開くより前に親が出勤しなくてはいけない」「退勤してからお迎えに行こうにも保育園の閉園時間を過ぎてしまう」という場合、フルタイムで働くことはできません。
とはいえ深夜遅くまで開いている保育園は非常に少なく、そこまでしてフルタイムで働きたいかという葛藤も起こりがちです。
まずは余裕を持って送迎できるか、時間のシミュレーションをしてみましょう。
万が一、交通網の遅れや渋滞が発生したとき、残業になったときのことも考えておくのが大切です。
保育園時代には工夫で乗り切れたとして、子どもが小学校に進学するとともに急に仕事と両立できなくなったと感じる家庭も多いです。
学童に無事入れたとしても、地域によっては保育園より先に閉室してしまうことがあります。
どうしても子どもひとりで自宅にいる時間が長くなり、目が行き届かないことを不安に感じるかもしれません。
宿題や交友関係のサポートも必要になるので、むしろ小学生になってからの方が自宅にいる時間を長くしたい、と感じる保護者も多いです。
保育園時代だけでなく小学生になってからのことも考え、長く働ける環境に身を置くことがおすすめです。
時短勤務できずフルタイムを続けた場合、生活がバタバタして子どもの体調やメンタルに影響が出るケースがあります。
平日夜の時間が足りず、食事とお風呂を済ませてすぐに寝る毎日が続いてしまうと、親子の関わりが少なくなります。
絵本やおもちゃで遊べる時間がなくなったり、何気ない会話をする余裕がなくなったりすることもあるでしょう。
急かしてばかりの毎日に、親子ともども疲れ切ってしまうことが多いのです。
また、睡眠時間が足りなくなって体調を崩しやすくなることもあるので要注意。
未就学児のうちは特に体調を崩しやすく、急変も多いので安易な判断は禁物です。
フルタイムで働いて家事も育児も、となるとママ自身の負担も大きくなります。
疲れが取れず体調を崩して欠勤したり、休みの日に寝込んでしまって子どもと遊べなかったり、意外な落とし穴があるかもしれません。
イライラが募ると子どもを叱ったり夫婦喧嘩になったりすることも増え、家庭内の雰囲気が悪くなってしまうことも考えられます。
子どものためだとわかっていても、ストレスフルな毎日を過ごすのはつらいもの。
過剰な負担がかからない範囲で仕事を調整するのも、大切な要素です。
どうしても時短勤務できなかった場合、以下いずれかの方法で働き方を模索することとなります。
ただし、時短勤務を希望する人にとってはいずれもデメリットがある働き方で、渋々選んでも「こんなはずでなかった…」と後悔するかもしれません。
それぞれのデメリットを理解しておくことで、ミスマッチのある働き方を予防できます。
フルタイムで働く場合、「ワークライフバランスが取りにくい」ことが主なデメリットです。
全ての家庭が夫や両親のサポートが得られるとも限らず、ベビーシッターやファミサポは毎日予約できるわけでもありません。
時間のなさが余裕のなさにつながり、「どうしても大人の手が足りない」という生活になりがちです。
また、家族に負担をかけてまでフルタイムで働き続けることに、ママ自身が罪悪感を抱いてしまうこともあるでしょう。
もちろん、フルタイムにもメリットがあり、収入を伸ばせることやマミートラックに陥りにくいことは利点です。
ただし、家族の生活スタイルをフルタイム就労で維持できるか、自分自身に限界が生じないかを慎重に判断する必要があります。
派遣社員の場合、「働き方や労働環境が不安定になる」ことがデメリットです。
2015年の派遣法改正により、同じ事業所で派遣社員として働けるのは最大3年までと定められました。
4年目以降は、派遣先企業から指名があれば派遣先で正社員として就職するか、派遣社員のまま職場を変えるかの二択が迫られます。
正社員として就職すると、フルタイム就労を求められることもあるので、時短勤務のままでいたいときは、派遣社員で居続けるために職場を変えるしかありません。
当然、職場のメンバーも勤務先も仕事内容も変わるので、腰を据えてじっくり働く環境を整備したいワーママには向かないかもしれません。
また、派遣社員は時給制が主流で、正社員のように賞与や退職金の支給がほとんどありません。
夏季休暇や年末年始休暇など長期休みの際はその分稼げる金額も減るので、収入も不安定になるでしょう。
パートで働く場合、大きなデメリットとなるのが「キャリアアップできない」点にあります。
パートとして働く場合、後々正社員として再就職したくなっても、パートとしての職歴しかないことでハードルが高くなることが懸念されます。
正社員と比較して任される業務に制限もあり、スキルアップが難しいからこそ、年齢に見合った経歴・スキルが身につかないことも課題です。
将来性の高い若手やハイスキルを持つ同年代と同じ土俵で戦えず、悔しい思いをすることもあるでしょう。
今後また正社員として働くのを想定するのであれば、今が大変でもパートではなく時短勤務正社員の道を探るのがおすすめです。
「難しい」と言われることの多い時短転職ですが、コツやポイントを抑えれば説得力の高いアピールも可能なのでご参考ください。
時短勤務での転職を目指す場合、「限られた勤務時間でも確実に企業へ貢献できること」をアピールする必要があります。
まずは自分のスキルセットを可視化しておき、スキルや実績を具体的かつ定量的に伝えられるよう対策しましょう。
つまり、「できること」「成果を出したこと」「再現性のある経験」を明確に整理しておくことが、転職成功への鍵となります。
具体的には、職務経験を書き出し、具体的な仕事内容・担当領域・スキル・実績や成果などの数字をリストアップするのが近道です。
「SNS担当者としてInstagramのフォロワー数を半年で1,500人増加させた」「経理担当者として月100件の請求書をミスなく処理し、期日遵守率100%を維持した」など、わかりやすい経歴があると前職での貢献もイメージしやすくなります。
「時短勤務であっても、このスキルがあるので〇〇の職種には十分対応可能」というように、制約とスキルのバランスを説明できると、なお説得力が増すでしょう。
面接でも、経験や実績に裏付けられた確かな自信を持ってアピールすることができ、時短勤務のマイナスイメージを払拭できます。
なぜフルタイムではなく時短勤務にしたいのか、明確な理由を伝えられるよう可視化しておきましょう。
育児・介護・自身の療養など、個人的な事情を隠す必要はありません。
大切なのは、事情を誠実に伝えつつ、「時短勤務でも十分に貢献できる」「時間的制約があっても成果を出せる」という前向きな姿勢を示すことです。
時間を区切って働くことが逆に効率を生むという意識を植えつけられれば、面接担当者からの印象も良くなるでしょう。
ライフステージに応じて柔軟な働き方ができる姿勢も、長く貢献してくれる印象につながるかもしれません。
また、「〇時まで就業可能」「土日祝日は休みを希望する」など、条件面も明確にしておく必要があります。
面接に進んでからミスマッチが発覚するとお互い時間が勿体ないため、最低限求める条件が合致しているか確かめておきましょう。
入社してからミスマッチに苦しむことがないよう、転職先に関する情報収集を徹底することも大切です。
時短勤務で転職したいときは、特に以下の情報をチェックしておきましょう。
「時短勤務中の社員は、どのような業務を担当していますか?」「小さなお子さんを育てながら働いている社員の事例があれば教えてください」など、面接の場で質問することも可能です。
ただし、あくまでも「時短勤務でも会社に貢献したいから」というスタンスを崩さないように質問することを意識しましょう。
「時短勤務だがしっかり成果を出したい」「時短勤務でも評価される体制があると自身のモチベーションアップにつながる」など前向きな姿勢が見られる質問であれば、企業側も快く答えてくれます。
時短勤務での転職を成功させたいときは、そもそも「時短勤務が現実的に可能な業界・職種を選ぶこと」も大切です。
制度として時短勤務が存在していても、実際に“時短勤務で回る”業務内容かどうかは、業界・職種によって大きく差があるので注意しましょう。
例えば、以下のような業種・職種は比較的時短勤務がしやすいと言われています。
反対に、夜間早朝問わずシフト制での勤務が必要な職種や、土日祝日の勤務がほぼ必須の業種では、時短勤務ができても働きにくいかもしれません。
リモートワークやフレックスタイム制度など、時間や場所に依存せず働ける仕事も探しつつ、自分の強みとリンクする仕事がないか探っていきましょう。
時短勤務で転職しやすい業種・職種については、以下で詳しく解説しています。
正社員のポジションを失わないままどうしても就労時間を制限したい場合、やはり転職後すぐに時短勤務するのが理想です。
数が少ないとはいえ、転職後すぐに時短勤務できる求人は存在するので、諦めず転職活動してみましょう。
ここでは、理想に近い求人を探すためのコツやポイントを解説します。
気になる求人が見つかったら、事前に時短勤務の可否や開始時期を確認してから応募しましょう。
直接人事部に問い合わせたり、求人要綱をチェックしたりする方法があります。
ただし、前述の通り多くの企業では入社直後の時短勤務を前提としておらず、一気に採用のハードルが上がるのが事実です。
ダメ元で何十社にも連絡を入れ続ける覚悟を持ち、めげずに続けることがポイントです。
明らかに秀でているスキル・経験・実績がある場合、面接時に交渉できる可能性があります。
企業側も「これだけ高いスキルを持っているのであれば時短勤務でもしっかり貢献してくれるかもしれない」とポジティブな見方をしてくれるので、意外と交渉がうまく進むかもしれません。
しかし、最初からフルタイムの業務量を任せる前提で求人票を作っている場合や、労働時間の長さを重視したい場合も多いのが現状です。
そもそも入社してすぐ時短勤務できる就業規則になっておらず、希望されても応えられない企業も多いので注意しましょう。
せっかく面接に出向いたのに不合格になってしまうことが多いのを覚悟し、チャレンジすることが大切です。
最もおすすめの方法は、ワーママ専門の転職エージェントを活用することです。
トライアンドエラーで自己流の転職活動をすることもできますが、転職後すぐに時短勤務できる求人に出会えるまで、相当な時間がかかります。
また、うまく求人が見つかっても選考を突破できるとは限らず、高い倍率が壁になるかもしれません。
一方、ワーママ専門の転職エージェントでは、下記のような企業の求人を取り扱うことが多いです。
ワーママならではのキャリアプランづくりを応援しつつ、選考対策もしてくれるので困ったときは相談してみましょう。
ハローワークや一般的な総合型転職サイトに限界を感じたときや、効率よく短期間で転職先を確定させたいときにこそ、頼るべき存在です。
最後に、正社員で時短転職した人の体験談を紹介します。
また、「時短勤務でもキャリアアップできた」「時短勤務でも昇進・昇給できる企業を探した」という事例も少なくありません。
時短勤務=キャリアの停滞、というイメージはまだまだ根強いものの、しっかり転職先を探していけばキャリアアップとの両立も可能です。
時短正社員として「正社員」のポジションを維持すれば、子供が成長してからフルタイムに戻すなど、フレキシブルなキャリアプランも確保できます。
時短正社員として転職した体験談は、以下でも紹介しています。ぜひご参考ください。
時短勤務を希望するワーママが多い一方で、時短勤務での転職が難しい現実があるのも事実です。
また、「転職直後から時短勤務できない」「時短勤務できるのは子供が3歳になるまで」などギャップも多く、理想的な働き方が見つからない方も多いでしょう。
リアルミーキャリアは転職直後から時短勤務できる求人を多数取り扱っている「時短正社員特化型転職エージェント」です。
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