【調査レポート】ワーキングマザー422名に聞いた転職理由と「両立のリアル」
復職後に直面する「時短の壁」と「マミートラック」の実態
〜転職理由の1位は「通勤時間の短縮(42.9%)」、両立のしんどさ1位は「時間に追われる焦燥感(41.2%)」。成果を上げても「時短だから」と評価されない評価制度への不満が浮き彫りに〜
ワーキングマザーの転職エージェントサービス「リアルミーキャリア」を運営する株式会社リアルミー(本社:東京都港区、代表取締役:増山 祥紘)は、当サービスに登録したワーキングマザー422名を対象に「転職理由と仕事・育児の両立に関する意識調査」を実施いたしました。
■ 調査の背景
近年、女性の社会進出や育児休業取得率の向上が進む一方で、育休から復帰した後の「キャリア継続の難しさ」が深刻な課題となっています。
時短勤務の選択により責任ある仕事を任されなくなる「マミートラック」や、労働時間の短さが査定に影響する「時短の壁」に直面し、不本意なキャリアダウンやモチベーション低下から転職を決意するワーキングマザーが後を絶ちません。
本調査では、2020年5月から2026年6月にかけて蓄積された422名の実データに基づき、彼女たちがなぜ転職を選び、どのような「両立の壁」に直面しているのか、その本音とリアルを浮き彫りにしました。
■ 主要な調査結果(サマリー)
- 転職のきっかけは「通勤時間の短縮(42.9%)」が最多。
物理的な距離と時間の制約が、両立の最初のハードルとなっている。 - 両立において1番しんどいことは「時間に追われる焦燥感(41.2%)」。
朝・夕の送迎や突発的なお迎えによるマルチタスクに疲弊する実態。 - 成果と待遇の不均衡
育休復職後に「180%の目標を達成しても時短だから昇給なし」など、時間だけを基準とする旧態依然とした評価制度への強い不公平感(22.7%)。 - 「隠れサービス残業」の常態化
短時間勤務契約でありながら、「持ち帰り仕事」や「子どもを寝かしつけた後の深夜稼働」でフルタイム並みの業務量をこなさざるを得ないダブルバインド。
■ 調査結果の詳細
① 転職を考えたきっかけ(複数選択可)
全回答者422名に対して「今回転職を考えたきっかけ」を尋ねたところ、最も多かったのは「通勤時間の短縮希望(42.9%)」でした。次いで、「仕事のやりがいが無い(30.3%)」、「仕事のプレッシャーが強い(26.1%)」、「小1の壁(25.6%)」と続きます。
「子育てへの配慮」を重視する一方で、やりがいの喪失や給与・評価への不満など、自身のキャリアそのものに対する危機感も大きな動機となっています。
- 1位:通勤時間の短縮希望(時間・体力面) ─ 181件 (42.9%)
- 2位:仕事のやりがいが無い(やりがい・キャリア) ─ 128件 (30.3%)
- 3位:仕事のプレッシャーが強い(やりがい・キャリア) ─ 110件 (26.1%)
- 4位:小1の壁(時間・体力面) ─ 108件 (25.6%)
- 5位:給与が上がらない(雇用形態・安定性) ─ 96件 (22.7%)
- 6位:残業 of 増加(時間・体力面) ─ 89件 (21.1%)
- 7位:急な休みや早退への気まずさ(職場の理解・人間関係) ─ 84件 (19.9%)
- 8位:給与の低下(雇用形態・安定性) ─ 77件 (18.2%)

② 最も解決したい悩み(単一選択)
「最も解決したい項目」においても、「通勤時間の短縮(15.6%)」が実質的な1位となりました。
また、「仕事のやりがいが無い(10.4%)」や、子どもの進学に伴い時短制度が使えなくなる・下校時間が早まる「小1の壁(9.2%)」、実態としての「残業の増加(8.1%)」が上位にランクインしており、時間確保とキャリアアップの「両立の綱渡り」をしている姿が見て取れます。
回答者の年齢(年代)別の悩み
すべての年代において「時間・体力面」の悩みが圧倒的な1位(全年代で40%以上)を占めていますが、年代ごとにキャリアやお金に対するスタンスに変化が見られます。
| 回答者の年代 | 時間・体力面 | 雇用形態・安定性・給与 | やりがい・キャリア | 職場の理解・人間関係 | その他 | 総計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20代 | 45.2% | 19.4% | 25.8% | 9.7% | 0.0% | 100% |
| 30代 | 42.4% | 23.4% | 19.4% | 8.2% | 6.6% | 100% |
| 40代 | 40.2% | 17.2% | 20.7% | 9.2% | 12.6% | 100% |
- 20代:キャリアへの強いハングリー精神と焦り
他の年代に比べて「やりがい・キャリア」への不満・悩み(25.8%)が最も高くなっています。
キャリア初期における「両立による成長機会の喪失(マミートラック)」への危機感が、転職活動の強い引き金になっています。 - 30代:時短による減給への直面とライフイベントの重なり
「雇用形態・安定性・給与(23.4%)」が他の年代よりも高くなっています。
復職直後の時短勤務に伴う大幅な減給に直面する時期であり、同時に住宅購入(マンション購入など)や今後の本格的な教育資金の確保といった経済的課題に直面し、収入改善を強く望む世代です。 - 40代:ダブルケアや育児の複雑化による「悩みの多様化」
「その他(12.6%)」の比率が約2倍に急増します。
これは、中高生になった子どもの不登校や思春期の精神的ケア、塾通いや中学受験の本格化、さらには「自身の親の介護・通院付き添い」 など、ライフステージの進行に伴い悩みの種類が非常に個別化・多様化していくためです。
子供の年齢(ライフステージ)別の悩み
子どもの年齢による集計では、さらにドラマチックな悩みの変遷(復職直後の孤独感 ➡ 幼児期の限界 ─ 小一の壁 ➡ 経済的必要性へのシフト)が読み取れます。
| 子供の年齢層 | 時間・体力面 | 雇用形態・安定性・給与 | やりがい・キャリア | 職場の理解・人間関係 | その他 | 総計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1歳未満(0歳) | 39.3% | 32.1% | 14.3% | 14.3% | 0.0% | 100% |
| 幼児(1〜6歳) | 44.4% | 19.9% | 21.1% | 7.0% | 7.6% | 100% |
| 小学生以上(7歳〜) | 35.0% | 27.5% | 12.5% | 15.0% | 10.0% | 100% |
- 1歳未満(0歳児クラスでの復帰直後):『手当カットの壁』と『突発休みの罪悪感』
「雇用形態・安定性・給与(32.1%)」が幼児期に比べて約12ポイントも高くなっています。これは、育休から復帰した直後にみなし残業代や手当が一律カットされ、想定以上の手取り激減(「時短の壁」)に直面して直ちに収入を戻したいと考えるためです。
また、「職場の理解・人間関係(14.3%)」も幼児期(7.0%)の2倍以上。初めての集団保育で子どもが頻繁に感染症に罹患し、毎週のように突発的な早退・欠勤が発生することで、職場への強い気まずさや罪悪感に苛まれている姿が明確に表れています。 - 幼児(1〜6歳:保育園・幼稚園):『両立限界のピーク』と『マミートラックへのもやもや』
「時間・体力面(44.4%)」がピークに達します。朝夕の送迎、時間に追われるタイムアタック、ワンオペ育児など、物理的なキャパシティの限界に最も追われている世代です。
同時に、「やりがい・キャリア(21.1%)」も非常に高くなっています。復職後、両立にもある程度慣れてきたものの、単調なルーティンワークばかりを任される状況(マミートラック)に「本当にこのまま同じことを続けていていいのだろうか」と、キャリアの頭打ちに対するもやもやが最も募りやすい時期と言えます。 - 小学生以上(7歳〜:小一の壁と教育費の高騰):『時間制限の継続』と『塾・中学受験への経済的備え』
小学生以上になると、時間の制約(35.0%)がやや和らぐ一方、「雇用形態・安定性・給与(27.5%)」が再度急上昇します。
子どもが小学生・中学生へと大きくなるにつれて、平日の習い事や、高額な学習塾・中学受験の費用
などの出費が重なり、「これ以上時短で給料を下げているわけにはいかない」「旦那に頼らず自分でしっかり稼ぎ、子どもの可能性を広げたい」と、安定した「正社員への切り替え」や「フルタイム・フレックス復帰による年収アップ」を強く望むようになるためです
■ ワーキングマザーが直面する「3つの壁」と生の声
面談データおよび個別ヒアリング記録から抽出された、当事者たちの切実なエピソードです。
【壁1】「評価の壁」:成果を出しても「時短だから」と蚊帳の外
時短勤務者がどれだけ高いパフォーマンスを発揮しても、労働時間の短さだけを理由に昇給・昇格から除外されたり、給与を大幅にカットされたりする事態が発生しています。
- 「個人目標を180%達成しているが、時短の基本給しかもらえず、インセンティブも廃止された。成果を出しても評価されない。」
- 「上司から『時短だから正当な評価は厳しい』と面と向かって言われた。同じ役割のフルタイム社員と比べて年収に大きな開きがあり、心が折れた。」
- 「時短勤務になった途端、みなし残業手当(月数十時間分)が全てカット。手取りが半分近く(35万円から18万円)になり、生活維持が困難になった。」
【壁2】「業務量の壁」:時短契約なのに「持ち帰り深夜稼働」が前提
業務内容はフルタイム時代と変わらないにもかかわらず、給与だけが「時短勤務」として差し引かれ、終わらない業務を深夜や休日に自宅でこなしている「ステルス残業」が常態化しています。
- 「16時退勤の契約だが、業務量が調整されず実際には回らない。結局、子どもを寝かしつけた夜22時から深夜2時まで毎日自宅でPCを開いて仕事をしており、自律神経のバランスを崩して倒れた。」
- 「時短だからと早く帰る際、周囲(フルタイム・独身社員が多い環境)の冷ややかな目線に強い罪悪感を感じる。結局仕事を自宅に持ち帰ってカバーしている。」
- 「自分が急な子どもの熱で休むと誰もカバーしてくれない。休んだツケは全て自分に回り、深夜稼働で補うしかない。」
【壁3】「マミートラックの壁」:育休復帰後の理不尽なポジション剥奪
復職後に、本人の意向や経験を無視して「サポート的」「代替が容易」な単純作業の部署に一方的に異動させられ、将来の成長実感ややりがいを奪われるケースです。
- 「復帰前はプロジェクト管理(PM/PL)などの上流工程を任されていたが、復職後は開発メンバー(テスト・検証のみ)へ降格。時短だからと会議への出席すら制限され、キャリアに断絶を感じている。」
- 「育休中に自分が守ってきたポジションを他のメンバー(身内など)に奪われ、復帰後は全く関係のないコールセンター業務にアサインされた。」
- 「『双子を育てながらの重要なポストは無理だよね』と産休前に社長から個室で言われ、復職後は子会社へ強制出向となった。」
■真の「両立支援」に必要なこと
多くの企業が「時短勤務制度」や「残業免除」といった、一見すると「子育てに優しい制度」を整えつつあります。しかし、本調査から明らかになったのは、「制度は整っていても、運用の実態が伴っていない(形骸化している)」という現実です。
「時短だから」という免罪符のもと、業務量を適切に減らさずに給与だけを引き下げたり、逆に「配慮」と称して本人のやりがいや専門性を活かす機会を完全に奪う(マミートラックに乗せる)ことは、優秀な人材のモチベーションをへし折り、結果として企業からの流出(離職・転職)を招いています。
企業がワーキングマザーの優秀なスキルを持続的に活かすためには、
- 労働時間ではなく「成果・アウトプット」に焦点を当てた、公平な人事評価制度の構築
- 突発的な休みや早退をチーム全体で補い合える、属人化を排除した組織体制(マルチタスク化・仕組み化)
- リモートワークやフレックス(中抜けの許容など)を活用した、柔軟な勤務形態のインフラ整備
が必要不可欠であり、これらを「当たり前」に活用できる組織カルチャーの醸成こそが、今求められています。
■ 調査概要
- 調査テーマ: ワーキングマザーの転職理由と「仕事・育児の両立」に関する実態調査
- 調査期間: 2020年5月5日 〜 2026年6月4日
- 調査対象: ワーキングマザー転職支援サービス「リアルミーキャリア」に登録した求職者 422名
- 調査方法: 面談時ヒアリングデータおよび面談前アンケートの定量・定性テキスト分析
